酸っぱいビールがうまい!サワーエール徹底解説


酸っぱいビールがうまい!サワーエール徹底解説

最近ビール好きが少し聞くようになってきているのは「サワーエール」や「サワービール」です。「サワー?!ビールが酸っぱいってこと?!」と思うのは普通のリアクションです。実際飲んでみても、今まで飲んだビールと味や香りが全然違うからびっくりします。ただ、もう少し飲むと、酸味に慣れてきて、すっぱくないビールにない風味が好きになって、癖になるという人が非常に多いです。

でも、いったいどうやってサワービールを作ってる?なんで酸っぱくなる?どんなスタイルがある?という質問をよくバーで聞きますので、ここでサワービールについてたくさんの情報をまとめて書きます!

レッツ・ゴー・サワー!

目次

  1. サワービールとは
  2. 発酵前:サワーマッシュ、ケトルサワリング
    1. 作り方
      1. サワーマッシュ
      2. ケトルサワリング
    2. ゴーゼ
  3. 発酵と同時:自然発酵、ミックスファメンテーション(混合発酵)
    1. 作り方
      1. 自然発酵
      2. ミックスファメンテーション
  4. 発酵後:バレルエージ
    1. 作り方
    2. フランダースレッド

サワービールとは?

簡単に言うと、ビールに酸味があれば、サワービールになります。あるスタウトやセゾンは少し酸味があるけど、酸味がメインではないので、あまり「サワービール」としてはカウントしません。一番有名なのは「ランビック」(lambic)というベルギーの伝統的なスタイルだけど、他のスタイルも山ほどあります。作り方もかなり違います。

サワービールの魅力はいろいろあります。まず、酸味が好きな人には味が良い。程よい酸味のあるものから、マーーーージ酸っぱいやつまで、いろんな酸味のレベルあります。ゆっくり飲むような、味が濃いサワービールもあるし、とても軽くてリフレッシングで夏に最高においしいサワービールもあります。

もう一つの魅力はサワービールが料理と合わせやすいです。ワインと似たような感覚になるのでいろんな味やいろんな国の料理とペアリングできます。

私がサワービールの一番いいところだと思ってるのは、サワービールの可能性。普通のビールは一つのイーストしか使わなくて、発酵が終わったら完成。サワービールは、違うイーストや菌を使ったり、バレルエージやフルーツを利用することで、ビールの可能性が広がります。IPAはホップ、イースト、モルツを変えることで、少し味が変わるけど、サワーの幅が本当に広くて、奥が本当に深くて、とても面白い分野です。しかも、まだ発見してない新しいスタイルや味の組み合わせはたくさんあります。サワービールの本格的な開発はこの数年しか行ってなくて、これからがとても楽しみです。

サワービールを酸っぱくなるタイミングで大きく3種類に分けて、説明していきたいと思います。

  • メイン発酵の前:サワーマッシュ、ウォートサワリング
  • メイン発酵と同時:ミックスファメンテーション、自然発酵
  • メイン発酵のあと:バレルエージ

まずは、ビールをイーストで発酵させる前に酸っぱくするスタイルから始めます。

発酵前:サワーマッシュ、ウォートサワリング・ケトルサワリング

作り方

このカテゴリーは、普通のビールイースト(Saccharomyces cerevisiae)で発酵させる前に、違う菌で発酵させます。Saccharomyces cerevisiaeは主にアルコールと炭酸を作りますが、乳酸菌やブレタノマイセス菌は乳酸や他の酸を作り、ビールが酸っぱくなります。この発酵のタイミングはいろいろありますが、終わったあとは普通のイーストで発酵させ、アルコールを出して、ビールを作るという流れです。

サワーマッシュ(Sour Mash)

ビールを作る時は、まず大麦や他の穀物を水で沸騰させます。これが「マッシュ」(mash)と言います。穀物がまだ水に入っている段階に酸味を出す菌を投入する方法がsour mashingと言います。あとで説明するwort souringと比べて、品質管理が若干難しくて、望ましくない味などが出やすい方法なので、そんなに使っていないんです。実は、バーボンを作る時、mashを発酵させる前に、前のバッチから残った発酵済みのmashを新しいmashを入れることで、菌をそのまま使えて、より安定している味のウィスキーが作れます。こういうmashをバーボンではなく、ビールにすると、Kentucky Commonというスタイルになります。現在はほとんど作ってないスタイルですが、sour mashで作ったビールはたまに見ます。

日本で買えるサワーマッシュ:Lagunitas Aunt Sally

ウォートサワリング・ケトルサワリング

使用済みのモルツを取った後の発酵前の麦汁はwortと言います。マッシュサワリングと違って、モルツや穀物が入ってない液体を酸っぱくするのはウォートサワリングと言います。ウォートサワリングの中で、最も聞く手法は「ケトルサワリング」です。「ケトル」はウォートを沸騰させる曹のことで、このケトルでウォートをサワーにすると、ケトルサワリングになります。ケトルサワリングのいいところは、乳酸菌を入れて発酵させたあと、もう一回ウォートを沸騰させると、簡単に殺菌できます。普通のブルワリーはいろんなスタイルのビールを作ってて、乳酸菌が違うビールに混入してしまったら大変なことになるので、ケトルサワリングで乳酸菌を使ったあと殺菌すると、乳酸菌による感染の恐れが若干低くなります。これで、ケトルサワリングは少し品質管理しやすい方のサワー化手法。

ただ、一つ気を付けないといけないところは、イーストと違って、乳酸菌の1次発酵はウォートにある糖分を全部使い切るというわけでもないので、サワリングが終わっても、糖分が残り、カビや雑菌が非常に生えやすくなります。これがウォートに入ってしまうと、いろんなオフフレーバーが出てきて、ビールがまずくなります。こうならないように、CO2の下でビールを保存したり、徹底的に設備を掃除したり、適当な温度管理したりするのが必要です。

ビアスタイル:ゴーゼ Gose

ゴーゼはゴスラーという、ドイツの中央にある町の伝統的なビール。ドイツのライプツィヒで特に人気になった。味が酸っぱくて、軽くて、塩気が効いています。伝統的に言うと、マッシュの50%以上が小麦で、ビールに塩とコリアンダーが入っています。ホップの味や苦味はなく、度数が4-5%で、非常にリフレッシングなスタイル。16世紀は特に人気だったけど、20世紀の半ばぐらいでゴーゼ作っているブルワリーは一時期一か所もなかったらしいです。今は特にアメリカで人気になっています。もともとはゴーゼが自然発酵で作られたらしいけど、今のものはケトルサワリングなどのものが多いです。

最近のゴーゼはフルーツが入っているものが多いです。塩分も少しあるので、暑い夏の日にとても美味しいスタイル。

日本で買えるゴーゼ:Modern Times Fruitlands Passionfruit & Guava

発酵と同時:自然発酵、ミックスファメンテーション(混合発酵)

作り方

ここでビールを酸っぱくさせる発酵がメインの発酵と同時に行う作り方を説明します。

自然発酵

自然発酵はビールにイーストや菌を入れずに、空中に自然に存在している菌でビールを発酵させる方法です。自然発酵の一番有名なスタイルがベルギーのランビック。普通のビールはタンクの中で発酵させるが、ランビックは大きくて浅い、蓋のない「クールシップ」という容器で発酵します。あるランビックは樽でも発酵するらしいです。空中の菌は場所によって種類が変わり、建物を変えたり、発酵用部屋の壁にペンキを塗ったり、季節が変わったり、環境を少し変えると、菌の質が変わってビールの味が変わってきます。

自然発酵でとても美味しいビールも作れますけど、少し間違えると飲めないものもできてしまう可能性がありますので、どちかというと、リスクがかなり高いビールスタイルです。

ビアスタイル:ランビック Lambic

ランビックはベルギーで古くから作っているスタイルで世界的に人気です。フルーツが入っているものも多くて、一番人気のフルーツはチェリーやラズベリー、ピーチ、カシスなど。フルーツが入っていないランビックはgueuze(グーズ)というもので、若いビールと古いビールのブレンドから作ります。古いビールを使うと、味がまだとんがっている若いビールのバランスがよくなります。

日本で買えるランビック(いっぱいある):Boon Kriek

ミックスファメンテーション(混合発酵)

ミックスファメンテーションは、普通のSaccharomycesイーストと同時に他のイーストも入れます。よく使う菌の種類はBrettanomyces, PediococcusとLactobacillus。サワービールには、乳酸を作ってくれる乳酸菌のPediococcusと特にLactobacillusがとても大事です。Brettanomycesを使うことで少し酸味が出るときもありますが、サワービールのレベルまで酸っぱくなりません。Pediococcusは使いにくいところがあるので、Lactobacillusの方が人気あります。ミックスファメンテーションの良いところは、菌の量や投入するタイミングなどを管理することで、味をよりよくコントロールすることができます。

ミックスファメンテーションは同時に複数の菌種を入れて、適当に発酵させることも可能ですが、菌を別々に順番でウォートに入れて、ウォートの温度、pH管理などで糖分残分をコントロールすることで、各種類のイーストの動きをきちんとコントロールすることができます。面白いと思ったのは、saccharomycesはホップがウォートにあっても発酵が進むけど、brettanomycesとかはホップが少ししかなくても発酵がうまく行かないらしいです。

ビアスタイル:ベルリナーヴァイセ Berliner Weisse

ベルリナーヴァイセはドイツの北の地方の伝統的なサワービールスタイル。度数が低くて、小麦が入っている、濁っているスタイルです。昔の作り方で、ウォートを沸騰させないことで、いろんな菌が入って、ビールが自然に酸っぱくなりました。今はいろんな作り方があり(ケトルサワリング、サワービールとサワーじゃないビールのブレンド、ミックスファメンテーションなど)、バレルエージ以外ならどんなサワー化方法でもOKみたいです。ドイツでは、昔からベルリナーヴァイセに甘いシロップを入れて、それで酸味を抑えます。最近アメリカなどで作っているものはフルーツやハーブが入っているものが多く、シロップを入れるとフルーツの味とバッティングしてしまいます。

残念ながら、現在、定番で日本に入ってくるベルリナーヴァイセがないです。しかし、アメリカのクラフトブルワリーはよく期間限定で日本に輸出しています。今年にうちに入っていきたのはこちらです。エルダーフラワーが入っててとても美味しかったです。

Victory Blackboard Series Berliner Weisse with Elderflower

発酵後:バレルエージ

作り方

バレルエージというものが非常に奥深くて、ここですべては書けませんが、サワービールに関する情報はここでまとめます。まず、「バレルエージ」は「樽熟成」のことです。今回、「樽」というと「木樽」のことです。つまり、バレルエージは、ビールを木樽に入れて、熟成させるという意味です。新樽(まだ使ったことない樽)ももちろん使えますが、面白いのは、スコッチ作りに使った樽や、ワイン作りに使った樽にビールを入れると、樽の本来の味と、前に入っていたものの味も少しビールに入って、かなりおいしくて複雑なビールが作れます。

樽の生涯が非常に面白いです。一番長いライフスパンは、まず新樽をバーボン作りに使う(バーボンは新樽じゃないとだめ)。そしてその樽をスコットランドに送って、スコッチ作りに使う。その樽をまたアメリカに送って、酸っぱくないビール作りに使う。菌が少し木に入ったら、サワービール作りに使う。味が落ちて、お酒作りに使い道がなくなったら、プランターとして使う、という非常に効率的な使い方があります。

ランビックも熟成に木樽を使い、ランビックの酸味が自然発酵の時だけでなく、樽に入っている時からも酸味が出ます。あるブルワリーは期間限定ビールとして、定番のビールを少し樽で熟成させて酸っぱくして、販売するときもあります。常陸野ネストが少し前に、「バレルエディション」のビールを出して、定番の4種類のビールをいろんな種類の樽でサワーにして、販売しました。

桜樽熟成Red Rice Ale、バーボンとシェリー樽熟成Espresso Stout、バーボン樽熟成New Year Ale、ワイン樽熟成Nipponia(常陸野ネストのFBページより)

バレルエージでビールを酸っぱくするのはいくつかのメリットがあります。まず、菌の管理がしやすい。マッシュやウォートの段階で乳酸菌などを入れると、望ましくない菌が設備に残り、他のビールに入ってしまう可能性があります。サワーマッシュなども、通常のビールよりマッシュ曹の拘束時間が長くなり、他のビールはしばらく作れません。バレルエージだと、普通のビールを普通のスピードで作って、樽に入れて寝かせるだけなので、他の設備の超過使用時間があまり長くならないんです。ただ、樽熟成の弱点は、最終的にビールが出来上がるまで他のビールよりかなり時間がかかり、そして樽自体を買わないといけないので、少しコストが増えます。

ビアスタイル:フランダースレッド Flanders Red

ベルギーのフランドル地方の伝統的なスタイル。赤茶色いビールからスタートして、2,3年間ぐらいビールを大きいオークの樽で熟成させます。これでビールが酸っぱくなって、赤ワインに近い味わいになります。ボトル詰めする前は、若いビールと熟成が長いビールをブレンドするところが多いです。酸味が乳酸だけでなく、酢酸も少し効いてて、黒酢やバルサミコに少し似ていますが、それほど酸味が強くはないです。

日本で買えるバレルエージサワー:Duchesse de Bourgogne
日本で買えるバレルエージサワー:Rodenbach

若干長くなりましたが、これでサワービールの作り方、違い、特徴をまとめて書いてみました。本当に奥深い世界なので、ここに書いてあるのはほんの一部の情報しかないです。今、日本はまだIPAブームだけど、日本のブルワリーが新しいこと作ろうとしていくと、たぶん次に人気になってくるスタイルはサワーだと思います。これからが楽しみです(^^)